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路傍の神々(71) 上組西久部の薬師如来

 芝焼の跡は黒々と太い線を描き、春の近さを知らせてくれます。

 

 田原小学校から山田川を挟んで西側、目堀川との間に上組自治会西久部の里があります。

 

 今回は、この西久部の中心にある御堂の本尊薬師如来を訪ねます。

 

 この御堂は円満寺跡に建てられています。円満寺の創建については不明ですが、幕末に廃寺となりました。その後は六間四方(10.92m)の御堂が建てられていましたが、明治35年(1902)9月28日の台風で倒壊し、現在の御堂は平成元年(1989)8月6日に地元の方々の熱い思いにより再建されました。

 

 薬師如来は、「お薬師様」と呼ばれて親しまれている仏様です。東方にある極楽浄土薬師瑠璃(るり)光世界の教主で、人生を全うして衣食住の生活を安楽にし、病苦を払うとされることから、万病を癒(いや)し、寿命を延ばし、医薬を司ると仏として古くから篤く信仰されています。

 

 

 

 西久部の薬師如来は、光背・蓮華座・印相の各部が欠損して補修されていますが、衲衣(のうい)や三道部分などに金箔が残り、造立当時は金色に輝く仏像であったと推定されます。

 

 蓮華座には造立に関係した方々の名前が刻まれ、墨書で、「維時 寛政二庚戌七月廿四日」とあります。

 

 寛政2年(1790)庚戌の年7月24日に作成されたことがわかります。医薬の不充分であった時代に一心にこの仏に祈ったのでしょう。

 

 日だまりのあふれる西久部の里に、心もいっぱいぬくもりました。

 

 高さ30cm 木造

 

平成11年(1999)2月20日 第349号掲載

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