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路傍の神々(72) 上組西久部の釈迦誕生仏

 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)の春、その中でも桜は私たちに心から春を感じさせるものです。落花の雪に踏み迷いながら前回に引き続き、田原小学校西側の上組自治会西久部の里を訪ねます。

 

 西久部は数十戸といわれていました。この集落には各戸当番の家を回る「回り仏」があります。この「回り仏」が釈迦誕生仏です。

 

 「お釈迦様」は仏教の創始者で、広く民衆を救ったインドの真覚者です。釈迦はその誕生に際し、右手をまげて天を指して、「天上天下唯我独尊」(天地の間、宇宙の中で自分より尊い者はない)と言ったとされて、その時の姿を表現したものが誕生仏です。

 

 4月8日は花祭(仏生会(ぶっしょうえ)・灌仏会(かんぶつえ))として各地の寺院などを中心に行われ、灌仏を行うために季節の花で飾られた小さな御堂「花御堂(はなみどう)」を作り、その中心に水盤を置き、誕生仏を安置し、水盤には甘茶を湛え、小さな竹の柄杓(ひしゃく)で参詣の善男善女は思い思いに誕生仏に甘茶を注ぎ祈ります。

 

 釈迦が生まれた時に、八大竜王が甘露の雨を降らして産湯にしたことが伝わっています。

 

 西久部の誕生仏の制作年代は不明ですが、仏像の型式から江戸時代の作品と推定できます。

 

 像の背面に銘文があり、

 「施主浄心」

 

 浄心さんが、仏教に深く帰依(きえ)した心から作成したのでしょう。

 

 春の花々に囲まれて、厳かに行なわれる花祭。素朴な祈りと共に、ゆったりと春が過ぎて行きます。

 

 高さ13.5cm 金銅仏

 

平成11年(1999)3月20日 第350号掲載

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