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路傍の神々(84) 下組・塚原の線刻画不動明王像

 花の季節を控えて日射しも暖かく、まったりと麗(うらら)かに、ゆっくりと長閑(のどか)に春の日が過ぎてゆきます。

 

 田原街道豊郷バイパスの下組信号を東へ入り、山田川に近く、豊郷の田原風景を見渡すあたりに、塚原の星宮神社があります。今回も前回に引き続き、境内石仏群の中から線刻画不動明王石像を訪ねます。

 

 不動明王の像容は火(※えん)光背、右手に宝剣、左手に羂索を持ち、忿怒(ふんぬ)の形相で岩座に坐る姿をしています。

 

 不動明王は、火生三昧(かしょうざんまい)に入って一切の罪障(ざいしょう)を打破り動揺しないところから不動といわれ、大日如来の教令輪身(きょうれいりんしん)(変身)した明王の代表的存在とされています。また病気治癒(ちゆ)・安産・災害の除去・怨敵降伏(おんてきこうふく)・財福を得るなど広く種々の祈願を叶えてくれるとされ、篤く信仰されています。

 

 

 

 星宮神社に何故?不動明王があるのかは不明ですが、江戸時代までは神仏習合の思想であったために神社の境内に造立されたのでしょう。

 

 塚原の不動明王の銘文は裏面に

 

「寛延三年 八月吉日」

 

「願主 禅心」

 

寛延3年(1750)です。願主禅心さんはどんな想いでこの不動明王を造立したのでしょうか。

 

 周辺には「星宮」の小字もあり、地域の人々はこの社を大切にしたとでしょう。

 

 路傍(ろぼう)に残された石仏や小字などに歴史の香りを求めて、春の一日散歩に出てはいかがでしょう。

 

 高さ70cm 河原石

 

平成12年(2000)3月20日 第362号掲載

※えん

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