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路傍の神々(83) 下組・塚原の線刻画虚空蔵菩薩石像

 日毎に日脚(ひあし)が伸び、ゆっくりと確かに春の近付きを感じる頃となりました。

 

 田原街道豊郷バイパスの下組信号を東へ入り、山田川に近く豊郷の田園を見渡すあたりに、塚原の星宮神社があります。今回はこの境内石仏群の中から線刻画虚空蔵菩薩(せんこくがこくうぞうぼさつ)石像を訪ねます。

 

 虚空蔵様といえば、茨城県那珂郡東海村村松の日光寺虚空蔵菩薩、福島県河沼郡柳津町円蔵寺が柳津の虚空蔵様として有名で、13歳になった男女が参詣する十三参りは、十三仏の最後に位置することに由来します。

 

 実相無相の真実の智恵を無尽蔵(むじんぞう)に有するからその名があります。福徳・智恵・音声に功徳があるとされています。

 

 像容は五智宝冠を戴(いただ)き、右手に(※えん)光(えんこう)の生ずる剣を、左に三弁宝珠(さんべんほうじゅ)(理智悲)を置く開敷蓮華(かいしきれんげ)を持する。

 

 

 

 

 信仰のわりに作例は少なく、特に線刻は稀(まれ)で貴重な作品です。

 

 栃木県地方では虚空蔵菩薩が星宮神社の守り本尊とされ、神使は「うなぎ」とされていることから昔は、星宮神社の氏子は「うなぎを食べない」とされていました。

 

 塚原の虚空蔵菩薩の裏面には銘文があります。

 

「寛延二年 八月吉日」 寛延2年(1749)です。

 

 江戸時代中期に、この虚空蔵菩薩を造立した人々の思い、技術、そして財力など、その一つ一つに驚きを隠すことができません。

 

 先人の心のぬくもりと土の香りを大切にしたいと思います。

 

    高さ80cm 河原石

 

平成12年(2000)2月20日 第361号掲載

※えん

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