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路傍の神々(89) 田原招魂社

 緑しっとりと、朝露をレンズにして陽が昇る夏の一日が始まります。

 

 今年も平和への祈りと共に、55回目の8月15日を迎えます。私自身、戦争を知らない世代の一人ですが、現代の豊かさと歪(ゆが)み、平和の尊さを深く見つめたいと思います。

 

 田原地区を見渡す、自由ヶ丘の一角に今回訪ねる田原招魂社があります。

 

 招魂社とは、幕末以来の国事及び戦争殉難者(じゅんなんしゃ)の慰霊(いれい)を行う神社で、明治2年(1869)東京九段に設置され戊辰(ぼしん)戦争の戦死者を合祀し、明治12年(1879)6月靖国(やすくに)神社と改称され、満州事変昭和6年(1931)以来激増し地方へ普及して、昭和15年(1940)の紀元2600年に向けて整備された神社で、全国に分布しています。

 

 

 

 境内には、「田原地区戦没者芳名碑」があり、戊辰戦争(1868〜9)以来の戦没者の方々170名が刻まれ、昭和31年(1956)4月15日に建立されています。

 

 本殿は神明造で千木(ちぎ)と勝男木(かつおぎ)が印象的な石造の立派なものです。

 

 欧米先進諸国に追い付こうと必死になった近代の日本、しかし国家とは別に一人一人の心の中には戦争に対して、大きな葛藤(かっとう)があったことは様々な資料や語り伝えられたことから、生々しくわかります。

 

 二十世紀最後の夏に、家族で考えてみましょう。祖国の栄光と恒久平和(こうきゅうへいわ)を信じ敵陣に散華(さんげ)された方々に哀悼(あいとう)の誠 (まこと)を捧げ、現在の豊さと歪み、命の大切さをじっくりと、しっかりと、ゆっくりと。

 

平成12年(2000)8月20日 第367号掲載

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