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路傍の神々(78) 上組新谷の斉木観音

 夏の暑さから解放され、稲穂に秋の実りを感じながら散歩に出ました。

 

 田原街道の下田原交差点から南へ一本目を東に入ると、農家の入り口にお堂があります。今回はこのお堂の本尊「斉木観音」を訪ねます。

 

 斉木観音とは「斉藤家に伝わる木造の観音像」という意味で百数十年伝わっています。

 

 右手を頬(ほほ)に添え、左手を垂下させ、輪王座の姿をした如意輪観音の姿をしています。

 

 如意輪とは、車輪がどこにでも転がるように、意のままに現われ、六道の衆生の苦しみを取り去り、利益(りやく)を与える菩薩とされています。変化観音の一つで、六観音に数えられています。

 

 

 

 斉木(さいき)観音は、柔和な慈悲(じひ)深い顔をして温かさを感じます。

 

 光背は欠損していますが、光(※えん)(こうえん)二重円光光背があったと推定されます。

 

 口碑によれば、お堂の位置は現在より南西に百メートル位の場所に有り、本尊も金銅製のものが盗難に遇ったため、新たに現在の本尊を造立したと伝えられています。

 

 銘文はありませんが、江戸時代後期頃と推定できます。また堂前につるした鰐口は江戸時代中期頃の作と推定できます。

 

 桧(ひのき)一木造りですっきりした本尊が、幅3尺、奥行き2尺の唐破風(からはふ)の厨子(ずし)に入り、二間四方のお堂があります。

 

 秋の日を受けて静かに佇むお堂は、素朴そのもので地方の文化の味と、時を超えたぬくもりを感じます。

 

 高さ30cm 桧一木造

 

平成11年(1999)9月20日 第356号掲載

※えん

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