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路傍の神々(53) 下組の万霊塔

 夏の果て、日本の生活を彩る年中行事の中でも、「お盆」はふるさとを強く感じる時でもあります。

 

 河川改修も終り、自然の回復を待つ山田川の辺(ほとり)、東北新幹線と交差するあたりから川沿いに上流へ少し向かうと、今回訪ねる下組の万霊塔があります。

 

 万霊塔は、寺院の境内や墓地に建てられていることが多く、他の石仏とは異なり造立するのが目的ではありません。万霊塔自体に此の世の中に生きとし生けるもののすべての霊を宿らせています。この塔を回向(えこう)することによって、万霊を供養することを目的とするので、日常多くの人が回向しやすい場所に建てられることが多いとされています。

 

 万霊塔の分布は全国的にあり、建立当時の社会情況など多くの事象が理解できることから、各地の宗教史的な資料を示してくれる文化遺産です。

 

 

 

 下組の万霊塔の銘文は、

 

正面に、

「万霊塔」

 

裏面に、

「山田川改修に伴ない、共同墓地移転」

「平成二年二月六日」

 

とあります。

 

 山田川改修工事によって、ここにあった共同墓地を移転したために、万霊塔を建立(こんりゅう)したことがわかります。平成2年(1990)に建てられました。

 

 夕暮れの中、ホタルの淡い光で、先祖の霊に巡り合った気がしました。

 

 残された豊かな自然を大切に保全して、先祖を思う一瞬の夏を感じました。

 

 高さ139cm 石造

 

平成9年(1997)8月20日 第331号掲載

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