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路傍の神々(43) 下組の薬師如来

 紅葉した山々が美しく照り輝く中、通称田原街道を南に向かい、山田橋バス停留所の手前を左に入ると、田原小学校下田原分校跡があります。この一角に薬師堂があります。今回はこのお堂の本尊薬師如来を訪ねます。

 

 この薬師如来は、昭和45年(1970)4月に河内町指定文化財第一号になり、平成8年(1996)1月には県指定文化財となり、栃木県の中世仏教芸術の代表的な仏像となりました。

 

 地元の方々から「お薬師様」と呼ばれ、篤(あつ)く信仰され、大切に守り伝えられ今日に至っています。

 

 薬師如来は、万病を癒(いや)し、延命長寿を叶え、医薬を司どる仏として古くから信仰されています。

 

 この薬師如来は、かつてこの地にあった真言宗密興寺の本尊です。

 

 密興寺は、宇都宮城の「鬼門固め」として建立(こんりゅう)されたと伝えられています。

 

 

 

 造立年代については頭の内部に墨書が印され、

 

「密興寺本尊」

「広隆寺大仏師大蔵卿法眼真慶作」

「至徳二年乙丑十月八日」

 

 至徳2年(1385)は南北朝時代、北朝の年号にあたり、干支は乙丑(きのとうし)です。

 

 京都広隆寺を中心に活躍した法眼真慶が作成したことがわかります。

 

 松尾芭蕉の句に、

 

「菊の香や 奈良には古き 仏たち」という名句がありますが、私たちの美しいふるさと河内町にも古くから大切に守り伝えられて来た素晴らしい仏様があることを、秋の一日感じました。

 

 像高68.5cm 桧寄木造

 

平成8年(1996)10月20日 第321号掲載

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