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路傍の神々(26) 古田の聖観音

 田圃(たんぼ)を渡る風が快い季節となりました。古田公民館前の、二又の道を左へ進むと、古田地区の墓地があります。今回は、この墓地入口にある石仏群の中から聖観音を訪ねます。

 

 聖観音は、数多い観音のベースとなっています。十一面・千手・馬頭などの変化観音と区別するため、聖観音と呼び、正しくは聖観世音菩薩といいます。観音は、すべての衆生を救済するため33の姿に変化し、これを33応身といいます。

 

 像容は、頭部に宝冠を置き、左手には蕾(つぼみ)、または開花した蓮華を持ち、右手には与願印(よがんいん)を結ぶか蓮華に軽く手を添える形です。蓮華は慈悲のしるしで、蕾は衆生の本来持っている仏性が、今まさに花開こうとしていることを表現しています。

 

 聖観音を本尊としている寺院は、東京浅草の浅草寺が特に有名です。

 

 

 古田の聖観音の銘文は、像の背中に刻まれ

 

「元禄十五壬午天」

「乃至法界平等利益」

「五月吉日 魚津八右門」

 

とあります。

 

 元禄15年(1702)壬午(みずのえま)の年、5月吉日に建立されました。

 

 乃至法界平等利益(ないしほうかいびょうどうりやく)は、仏の世界では何人も平等に仏の恵が与えられるという意味で、魚津八右門という人物については不明です。

 

 今回の聖観音を見て、私たちのふるさと河内町にも素晴らしい文化財が野に点在していることを再確認しました。

 

 石造 高さ110cm

 

平成7年(1995)5月20日 第304号掲載

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