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路傍の神々(7) 釜根の巳待塔

 国道四号線を渡り、国指定重要文化財・岡本家住宅の西に消防器具置場があります。その横に、今回訪ねる「巳待塔」があります。

 

 巳待とは、巳の日に講の人々が集まって、深夜まで起きていて精進供養(祭祀)をし、身の安全や村内安全、五穀豊饒(ごこくほうじょう)などを祈ることを言います。特に己巳(つちのとみ)の日に行われることが多く、前日の戊辰(つちのえたつ)の日に行われることもあります。

 

 地域によっては、巳年は年廻りが悪いので、水害・地震・冷害などが多いとされ、供養や祈願によってこれらの災害から逃れようとしたとも考えられます。巳の日は弁財天の縁日(えんにち)でもあり、巳待では弁財天を本尊として祀(まつ)る場合が多いようです。弁財天の使いが蛇であることから、巳と弁財天の関係が理解できます。

 

 

 巳待塔は関東地方から東北地方に多く分布し、このような文字塔がその大半を占めています。

 

 この巳待塔の銘文は、

 

正面に「巳待塔」

台座に「講中」

左側に「釜井組」

右側に「嘉永五壬子年閏二月廿三日」

 

 嘉永5年(1852)で、釜根(かまね)自治会辺りを釜井組と呼んでいたと推定でき、現在でも「釜井」という小字が、このあたりに見られます。

 

 このような日待や月待の信仰が、当時の人々には何よりの楽しみであったようです。

 

 石造 高さ103cm

 

平成5年(1993)10月20日 第285号掲載

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