万年橋のカッパ
白沢に伝わる民話です。
奥州・遠野の地にカッパ淵という所があり、殿様が参勤交代で江戸に行く際、2匹のカッパが代表で江戸見物に行くことになりました。
カッパは頭の皿が乾かなければ人間には見えないとのことでしたが、この年は空梅雨でした。
白沢宿に着いた時にはすっかり乾いてしまい、九郷半川に飛び込み姿を隠しました。
久々の水でしたので日暮れまで遊んでしまい、本陣に戻ると殿様一行の姿が見あたりません。
江戸への道も、遠野への道もわかりませんので、殿様一行が江戸から帰るのを待つことにしました。
夏のある日、男の子が一人で万年橋(写真)のたもとでキュウリを餌にカッパ釣りを始めました。
カッパは大好きなキュウリが流れて来たので、キュウリを引っぱりました。
糸に付いていたので、その弾みで男の子は川に落ちましたが、たまたま下流で馬を洗っていたお百姓さんに助けられました。
キュウリは1本でしたので、もう1匹のカッパは食べることが出来ず、馬の後に付いて行けばキュウリが食べられると思いついていきました。
馬小屋にキュウリが2本ありました。
カッパが喜んでキュウリを掴んだ時、それを見た馬が怒り、カッパを追い回しました。
騒ぎを聞きつけて百姓さんが来て見ると、キュウリを持ったカッパが馬に追いつめられて困っていました。
するとお百姓さんは馬の手綱を引き寄せ、カッパから離したのです。
それは男の子が流された時、このカッパが子供が沈まないよう川の中で一生懸命支えていたのを見ていたからです。
その時の恩返しを込めて、もう1本キュウリをあげて万年橋のたもとまで連れて行き、仲間と一緒にしてあげました。
それから3年後、殿様が国元へ帰る時、カッパも一緒に帰りました。
以来、万年橋でカッパを見ることは無くなったとのことです。
(NPO法人グラウンドワーク西鬼怒が主宰した「かわちの昔話と絵本読み聞かせ講座」で披露されたこの話を、字数の関係で一部加筆・削除のうえ使わさせたいただきました。)
白沢町 永井光二
地域情報紙かわち 第89号
(令和7年1月発行)より